2023年9月2日 西丹沢本棚 本棚滝登り1本勝負

2023年9月2日 西丹沢本棚 本棚滝登り1本勝負

沢登りを行っている人で知らない人はいない「サワグルイ」より、「丹沢のラスボス」と称された本棚沢のF1「本棚」に体当たり!

今年は泳ぎ沢を中心に楽しんでおり、登攀要素の強い沢に取り組んでいない。

よって、シンさんにお付き合いいただき、私Fと2名でレッツゴー!!

4時待ち合わせのド早朝に出発。6:10に本棚到着!

シンさんも、誘った私もお互いに気持ちは超ナーバス。。。なぜならばこの本棚は「絶悪」らしい。絶悪はクライミングのグレードが高いとは異なり、「ホールド掛ける」、「支点が壊れる」、「足元崩れる」、「滑っている」とか、、、、。

何かしらチャレンジングな登山をするときは多少なりとも取り付き前にみんなこんな気持ちになっていると思われるが、今日はいつにも増して。。。

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ルートは下図の赤、黄、青の3ピッチ。1ピッチ目と3ピッチ目を私が行い、2ピッチ目をシンさんが担当。

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1ピッチ目は3ピッチのうちで一番長いが絶悪度はマシらしい。

が、早速ホールドが簡単に剥がれる。滑りもあるので、たわしでゴシゴシしながらフットホールドを綺麗にして足を乗せていく。日頃の風呂ブラシでカビ落としをしている成果が出る。

早朝なので、本棚の下には見物客はいない。また、7時頃にはちょうど日が差して暑くなる。落石が高確率で発生するし、シャワークライミングという状況でもあるので、このルートは見物客がおらず、日が当たる早朝にトライするのが望ましい。

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1ピッチ目で肝を冷やしたのはこの部分。前述ルート図赤色の線が左に曲がってから右に戻る部分。下の写真の私がいるのが1ピッチ目終了点。よって終了点のすぐ手前。ホールドの乏しい岩盤を登るが、右足を置きたい岩はこの岩盤とはクラックで寸断されている。ここまででホールドが何度も欠けているので、その右足を置こうとする岩も信用できない。

エイっと立ち上がると立ち上がれたが、下写真の2本のロープが重なる岩溝に体を持ち上げなくてはいけない。その下の黄色のロープが走る左のクラックはキャメロットの2番が決まりそうだが、すでに下で使用してしまった。もちろん残置はない。次に体を上げるための良いフットホールドも見当たらない。2番が決まりそうなクラックはジャミングはバチ効きだが、態勢が悪い。その上にガバも見当たらない。よってランナーを取って突っ込みたいが2番はもう玉切れ。。。

最終的には下のランナーが出ている部分にハーケンスカーのような部分があったので、気休めのマイクロを突っ込んで、体を岩溝にねじ込んでいった。どうにか突破。

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1ピッチ目終了点。シャワー。

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2ピッチ目は、1ピッチ目終了点の右側から岩溝を詰め上げる。15mほどのピッチだが、絶悪。最初はホールドがあるが下の写真の草付きが見えるころには、ホールドもほぼ無くなり、向かって右側は泥もつく壁で足も滑る。岩溝を詰め上げた後も、支点まで1,2m左にトラバースするがここも気を抜けない。

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2ピッチ目終了点。やや安心のしっかりハーケン。

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2ピッチ目終了点から、1ピッチ目終了点を見る。

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ラスボスの首元まで来た!3ピッチ目いざっ!

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他の方の山行記録にも散々書いてある「ガバと思われるものはすべて動く」「頭ほどの岩が簡単に動く」を実感。フレークもなんでも動くので、それらの中からマシなものを見つけてホールドとしていくしかない。おまけに激シャワー。

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3ピッチ目詳細以下の通り。前述の全部のガバが動くジェンガエリアを上がっていき、本流をすぐ左に見るリッジ部分に至る。

ただし、この点は他の方のルートと異なっている可能性がある。こののち上から見ると、ジェンガエリアから見て右側である草付き寄りに残置支点や残置アルパインヌンチャクがあった。それらを追うならば、ジェンガエリアから早めに右上するか、確保支点から直上する必要があると思われる。こんなにボロボロなので滝の形状が昔と変わったのか、または私の行ったルートとは別に右ルートがあるのかも知れない(「サワグルイ」の山行記録には複数ルートがあることに言及している)。

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本流寄りのリッジ部分の第一関門。ここまでランナーを取れたのはジェンガエリアの信用ならないフレークにスリングを掛けたのみ。このリッジ部から右上していくが、信用ならないハンドホールドのカチを持って、右フットホールドに左足を乗せるスタンス入れかえをしなくてはいけない。そのあとの自由になった右足を乗せる部分も苔を落としてどうにか見つけた外傾ホールド(下の写真)。ここでランナーが取れないのは厳しすぎる。落ちたら長い。それでもフレークが止めてくれればよいが、全く信用できない。フレークが崩壊したら、ビレイヤーの支点にも影響が及ぶかもしれない。カムが決まるクラックもない。

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リスといえるのか定かでない唯一見つけた割れ目にハーケンを打ち込んでみる。ハーケンは入っていくが、打った感覚は効いているのか怪しい。ハーケンの顎が岩面に到達するが、さらに打ち込むと、顎の部分は簡単に岩面に打ち込まれていく。ということはかなり柔らかい岩なので、墜落も止められるかは怪しい。そんなこんなで打ったのが下の写真のランナー部分。

本流内にもスタンスは見えず、これしかやれることはないので、打ち込んだハーケンを信用して、ここもエイヤっで何とか右上に抜けた。

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右上には、右上に続くランペというか水流のある浅いフレークのような部分が続く。これをホールドにして上に上がる必要があるが、やはりランナーはない。他の山行記録(10年以上前とかだが)残置ハーケンなどがあると書いてあるので、そのルートと異なるコースを行っているのか、これだけもろい岩なので形状がその時と大きく変わって、岩ごとハーケンが落ちていったのか。

その間も激シャワーで真夏なのに寒さで気持ちが萎えてくる。右にトラバースするとシャワーからは逃れられるレッジがある。前述の右側残置支点&残置アルパインの続くラインもあるようで、それらで支点もとれる。このレッジで一息。

再びシャワーの中にに入り、先ほどの浅いフレークを指で探るとナッツ設置可能と思われる部分を発見!このナッツを決めたことで突っ込めるようになった。突っ込んで1段上がった!

ラスボスの最後の最後、落ち口手前で最後の難関。またまたまともなフットホールドがない。手をいっぱいに伸ばしてさらにその少し上付近にあるホールドが見えるが、デッド気味に取らないとと届かない。しかし、さっきのナッツの上にはランナーがない。ナッツはロープの流れで上方にひかれて外れている可能性もある。デッド気味に取ったホールドが欠けたとしたら、ロングフォール確実。やはりここで突っ込むならば支点が欲しい。上部にリスなんだかはっきりしない部分が見える。ここにハーケンを打ち込むしか手はない。一本ハーケンを打とうとするもまさかのハーケン落下。クロモリハーケンもあるがこの岩にはクロモリは硬すぎる。残り1本の軟鉄ハーケンを力づくで何度も打ち込むと、ハーケンが打ち込まれていった。簡単には入らないのでおそらく効いていると思われる。ここをランナーにとり、上部のホールドをキャッチっ!ホールドは欠けずに体を止めてくれた。ふぅー。

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そのあと2,3手だったかカチを持って体を上げていくと、ついにラスボスの落ち口に到着!

思わず「神様ありがとうございます」。

数ある木の中で一番太いものを選択してセカンドのビレイに移る。

無事シンさんも落ち口に到着!

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落とした軟鉄ハーケン1本は偶然にも3ピッチ目ビレイ中のシンさんの足元に。よって回収完了🙆

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本棚の右岸側にトラバースして、地形図の傾斜がやや緩んだ場所から懸垂を交えて下降。

無事に本棚取り付き点に戻ってきた!!!

達成感MAX!「絶悪」という評価に恥じない滝でした。

シンさんお付き合いいただきありがとうございましたっ!

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今回の装備は以下の通り。

ウェット上着、フードが付いているレインコート。

激シャワーなのでウェットで体が冷えないようにするのは重要と思われる。またフードを被ることで背中から水が入り込むのをある程度ガード。これらのおかげで、水流にたたかれても冷静な判断ができた。焦らず落ち着くためにはこれらのウェア準備はかなり重要。

靴はフラットソール。1ピッチ目は私はたわしも使った。フラットソールで足が滑るようなことはなかった。細かいスタンスにも乗れた。

ギアはカムのコンマ以下を2セット、1~2番を1セット、ナッツ、ボールナッツ、軟鉄ハーケン、クロモリハーケン、アルパインヌンチャク8本、50mダブルロープ2本。

1ピッチ目では1番、2番が入りそうな部分が何か所かあった。ジャミングが決まる部分で「2番があったらな」とも思ったので、1番、2番は2セットあってもよいと思われる。また、ハーケン、カム、ナッツなどが決まるクラックやリスは限られるが、決められる可能性がある場所は確実にランナーをセットしていきたい。よって、十分にギアを持って備えるのは重要だと思われる。

<コースタイム>

西丹沢ビジターセンター5:30→本棚6:10→登攀開始6:40→2Pスタート7:45→3Pスタート8:25→登攀終了9:30→下山開始10:00→本棚到着10:30→西丹沢ビジターセンター11:40

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