2022/3/12-13 旭岳東稜

2022/3/12-13 旭岳東稜

八ヶ岳東面のバリエーションルート、旭岳東稜に行ってきました。

なぜかなかなか縁のないルートがあって、旭岳東稜もそんなルートの1つでした。会の先輩のKumaさんにお勧めルートとして教えてもらい、最初に計画したのは4年前。その後、天候や諸事情で流れ続け、今シーズンも実は3回目の計画。当初とはメンバーは入れ替わりましたが、Fさんが一緒に行ってくれました。

美し森駐車場に車を止めて、7時に出発。天気は快晴です!

約2時間で出合小屋に到着。向こうにはこの間FさんとNさんが登った天狗尾根が見えてます。大天狗は立派ですね!

旭岳東稜の取り付きの目印となる「ツルネ東稜」の標識は雪に埋もれてわずかに柱の先端だけが覗いていたのをFさんが掘り出して見つけてくれました。思っていたより出合小屋から近く、知らなければ通り過ぎていたかもしれません。天狗尾根の時にしっかり下見してくれていたFさんに感謝です。

ツルネ東稜の標識

ここでハーネスとアイゼンを装着。尾根の末端付近にビニールテープも見えたので、そのまま取り付きましたが、所により胸まで埋まる深雪と早速格闘。尾根上に上がってみたら、末端を回り込んだ右手のルンゼから上がってくるトレースがあり、そちらが正解だったようです。

尾根上はところどころ細い所やちょっとしたクライムダウンもありますが、問題なく進んでいき、だんだん行く手が見えてきました。

左が権現岳、右が目指す旭岳

上部岩稜の通称「五段の宮」の手前の急な雪壁を登っていくと、だんだん傾斜は立ってきて、ザラメ状の雪はなかなかピックがきまらず、雪の下は軟らかい土の草付きで気を抜けない感じです。Fさんが抜け口の雪を切り崩したところ、落ちてきた雪のブロックとシャワーの直撃を受けました。ダブルアックスがしっかり効いていたから良かったものの、体を上げる不安定な体勢だったら危なかったかもしれません。Fさんが抜けきるまで、しばらくシャワーに耐えながら待機しました。

雪壁を登り切ると、何度も写真で見た「五段の宮」が目の前にありました。

五段の宮

Fさんは今日のうちに抜けてしまいたそうでしたが、時間はすでに13時過ぎ。頂上まではビバークも困難な核心部に突っ込むのはリスクがあるので、計画通りここで幕営にさせてもらいました。

五段の宮基部の稜線上を掘り下げてテントを設営し、後は雪を融かして水作りと、Fさんが持ってきてくれた餅入りあんかけラーメンの夕食をいただいて、17時には寝てしまいました。他に登ってくるパーティーはなく、私達の貸し切りでした。夜はそれなりに気温は下がりましたが、風も弱く穏やかな夜でした。

翌朝は4時に起床(11時間も寝てますね)。アルファ米とレトルトカレーの朝食を済ませ、登攀は明るくなってからにしたかったのでゆっくり準備して、テントを撤収して登攀準備を整えたところで6時。ちょうど雲間から朝日が出てきました。準備しているところで、後続の女性3人パーティーと男性2人パーティーが登ってきました。

五段の宮は左の灌木帯から巻くこともできますが、なるべく直登で行きましょう、と話していました。1~3段目と4~5段目の2Pに分かれていて、Fさんが前半のリードを申し出てくれたので、私は岩稜手前の立ち木の名残を支点にしてビレイ。雪が多いとそれぞれの段がキノコ雪になっていることもあるようですが、だいぶ融けたのでしょうか、概ね岩が露出していました。

1段目はやや左から取り付き、リングボルト2本でランナーを取った後に右足を高めのスタンスに上げるのが難しいところ。2段目は左の灌木に向かう方が傾斜が緩く、そちらから上がっている記録もありましたが、そこまでがやや遠くてスタンスが悪いようで、Fさんは右手の小垂壁をレイバックで引き上げて突破しました。3段目はフィストサイズのクラックで立ち上がってから、アックスを打ち込んで上がりますが、アイゼンでのマントルは難しく、いったんテンションでレストしてから越えていきました。3段目の上まで約30m。ハーケンは少なく、カム#0.5と#1が役立ちました。3段目は#2~3も使えると思います。

続いて私も登りますが、動きを見ていてフォローでも確かに難しい。ホールドはあるのでフリーならどうということはない(IV程度?)はずですが、幕営含めた全装備にグローブとアイゼンの冬仕様ではシビアです。岩部分はオーバーグローブを外して登り、雪面では着けてを繰り返して登りました。

Fさんがいる所が1P目の終了点
1P目終了点から基部を見下ろす。左の人が集まっているところが昨夜の幕営地。

4段目は本当の直登は不可能で、岩壁の右手を上がっていきます。下がどうなっているのかわからない、高度感のある雪のトラバースですが、この日は(見た目は)しっかりしてそうで、トレースもばっちり。その先も急な雪壁を灌木でランナーを取りながら、5段目を登っていきます。”これは難しいところは全部Fさんに登ってもらっちゃったな”と思いつつ、稜線上に戻って短いナイフリッジを越え、木に残置スリングが巻き付けられているところで2P目終了(30m)。

4段目のトラバース

その先は細い雪稜が続いていて、「コンテにします?」と聞きましたが、「切りましょう」というFさんの返事で、後続との距離も開いていたので引き続きスタカットで行きました。

3P目。頂上下の三角ピークが近づいてきた。

頂上直下の三角ピークは、左上する凍った小ルンゼを登ります。振り返ると、後続のリードがキノコ雪を越えてきてました。こうして見ると、とんでもない所を登ってきてますね!

2P目最後のナイフリッジ

三角ピークを越えると、後は頂上まで緩やかな雪稜で、一応私がロープを引いて山頂の標識まで上がりました。

頂上直下の雪稜でポーズを決めるFさん

Fさんを迎えたのが9時。6Pを3時間で、私達としては悪くないペースでした。頂上で3時間ぶりにエネルギー補給しながら、ロープを畳んで下山開始。天気は下り坂で、稜線はガスに包まれ始めました。10時に地面が露出しているツルネ東稜の分岐に到着。

ツルネ東稜の樹林帯を下り始めると風もなくなり、穏やかな雰囲気になりました。右手にはさっき登ってきた五段の宮(中央)、左の方の垂壁は権現岳です。

ツルネ東稜はルートを間違えやすい(赤テープが紛らわしい所にある)ようですが、基本的には左へ下りていけばよいようです。出合小屋でアイゼンやハーネスを外して担ぐと、肩に食い込む重量感。この重さを担いで、よく登攀したなと思います。雪の踏み抜きにややうんざりしながら歩き続けて、14時に美し森駐車場に戻りました。

4年越しの宿題がようやく登れました。根気よく(しつこく?)計画していれば、いつかはチャンスが巡ってくるとあらためて感じました。旭岳東稜は、雪の状態によってだいぶ状況が変わると思われます。今回はラッセルはほとんどなく、五段の宮の雪も少なめでした。五段の宮の上の雪稜は朝一で雪が締まってましたが、雪が緩んでくると怖くなると思います。

Fさん、ありがとうございました! 次の目標は権現岳東稜でしょうか!?

<行程>

1日目 美し森駐車場(7:00)ー出合小屋(9:00)ー旭岳東稜取り付き(9:15)ー五段の宮基部(13:15)

2日目 五段の宮基部(6:00)ー旭岳頂上(9:00)ーツルネ(10:00)ー出合小屋(11:40)ー美し森駐車場(14:00)

シン