2024/4/27-29 槍ヶ岳 北鎌尾根

2024/4/27-29 槍ヶ岳 北鎌尾根

残雪期の槍ヶ岳北鎌尾根に行ってきました。

北鎌尾根は会に入るより前に夏に登りましたが、その時は視界が悪く、気づいたら山頂にたどり着いたという感じで、できれば大槍の姿を眺めながら残雪期にまた登りたいと考えていました。去年は天候が悪く小川山に転進となりましたが、今年はちょうど高気圧の通過に当たり、Fさん、Nさんと私シンの3人で登りに行きました。

前夜に横浜を出発、沢渡で仮眠して、始発のバスで上高地へ。今年は雪が少なく、槍沢ロッヂのあたりからようやく雪が現れました。槍沢の雪渓を大曲まで進んで、アイゼンを着けて水俣乗越を目指した・・・のですが、地形図と見比べて確認したにもかかわらず、一つ西側(槍ヶ岳側)のルンゼを詰め上げてしまいました。天気は高曇りで、少し雨がぱらついた時もありました。

少し東鎌尾根を水俣乗越へ移動してから、途中から斜めにトラバースしながら下降して天上沢に合流、ちょうど正しい水俣乗越から2人パーティーが下りてきていて、話を聞くと同じ神奈川のさがみ山友会の方で、3日間前後しながら進むことになりました。北鎌沢出合の対岸にテントを張って1日目はここまで。例年なら雪がつながっている北鎌沢ですが、今年は下の方は沢が露出しています。

Nさんが作ってくれた、ごろごろベーコンと野菜が入った豪華なカレーと、手製ブレンドのスパイスが効いたマッシュポテトの夕食をおいしくいただいて17時台に就寝。

2日目は2時起床、Nさんのパスタの朝食をいただいて、3時半に出発。出だしは北鎌沢の右手の灌木帯の中を進みました。

徐々に急になる北鎌沢を登ること約3時間、到着した北鎌のコルは雪のリッジになっていました。尾根の下半分にはほとんど雪がありません。

ここから北鎌尾根がスタート。予報通り、空は快晴で、気温は高く、早くも雪は緩み始めてます。

独標取り付きに到着し、2人パーティーが先行していたので、しばし手前で昼寝しながら待機。夏は千丈沢側をトラバースできますが、雪のある状態ではとてもトラバースする気にはなれない斜度です。ルートは少し左に回り込んだ急なルンゼ状の所から登ります。Fさんリードで、ロープ2本をNさんと私にそれぞれつないで登りました。

出だしのルンゼはかなりの急傾斜です。

ルンゼを上がった先は、岩と雪のミックスの斜面。なかなかの高度感です。

3ピッチ目終了店は傾斜の落ちた雪面の中の岩で、ここからはロープをしまって独標を目指しました。

独標のピークに着くと、大槍が小槍と孫槍を従えて姿を現しました!

独標の次のピークは岩に突き当たってから、張り出した岩を右手にトラバースするところが少しシビアで、残置スリングの助けも借りつつ進みました。その先も次々と現れる岩場や雪壁を越えていきます。アイゼンでの岩場はあまりスピードが出ないし、雪壁は滑落したら止まらないような斜面も多く慎重に進むので、どんどん時間が過ぎていきます。

P13付近で雪のない幕営スペースにテントを張っている2人パーティーを羨ましく横目に見ながらもう少し進むと、P14の手前の小さなコルで、雪を整地すればテントを張れそうなところを見つけました。本当は北鎌平かP15まで進みたいと考えていましたが、すでに時間は17時を過ぎて、行動時間も14時間近くになっているので、今日はここまでとしました。

今夜の夕食の担当はFさんで、餅入り担々麺でした。Nさんは珍しく体調が悪いのか疲れか、あまり食欲がない様子。ゴミ袋1杯分の雪を溶かして翌日の水を作り、20時前に就寝。

3日目は、明るくなってから出発しようと、3時半起床。朝食は私の担当で、チャーシュー入り棒ラーメンと一番質素なメニューでしたが、軽量化ということで・・・。

テントを撤収して5時に出発。まずは目の前の雪壁ですが、先行した2人パーティーの様子を見ているとなかなか厳しそう。実際、凍ってピッケルが刺さりにくい所や、浮石が積み重なったガレ場などきわどいところで、先に上がったFさんがロープを垂らしてくれました。

P15の少し先から懸垂下降。夏に来た時はクライムダウンしましたが、アイゼンをつけた状態では懸垂の方が早くて安全かと思います。

だんだんと大槍が近付いてきます。8時に広々とした雪面が広がる北鎌平で大休止。いよいよ穂先を目指します。夏は登攀要素があるのは頂上直下のチムニーくらいですが、雪があると下の雪壁も手ごわそうです。

穂先の三角錐の左下から取り付いて、2ピッチ目までは岩と雪のミックスをそれぞれ50mいっぱい伸ばしました。

2ピッチ目終了点からは、先行パーティーは右手に進んだようですが(こちらがチムニーだったようです)、私達は木の杭が立っている左手にトラバースして、その上のミックスの斜面を上がると、頂上の祠のすぐ横に出ました。

11時半に登頂。テント場から6時間半で、想定よりだいぶかかりましたが、無事に登れて良かった。

ここからは登山道ですが、はしごと鎖が連続する穂先からの下降は、アイゼンでは気が抜けない区間が続きます。

12時半に山荘前から槍沢を下降開始。Nさんが調子が悪そうでしたが、ゴミ袋を使ってシリセードで下ったらテンションが上がったのかババ平に着く頃には見事に復活、私達が追い付くのが大変なほどのペースでどんどん進みました。高山病の症状だったのかもしれません。

今日中に上高地から下山できるかはらはらしながら、ひたすら歩き続け、17時半の最終バスには間に合いませんでしたが、タクシーで沢渡に戻れました。ちなみに、バスのチケットは往復で買っていましたが、後で新島々の営業所で払い戻してもらえました。

振り返ってみると、残雪期の北鎌尾根はもっと体力系かと想像していたのですが、思ったよりも技術面も要求される印象でした。雪質は悪くなく、難しくはないものの、ひとたび滑落したら致命的な斜面も繰り返し出てくるので心身が消耗していきます。想定していたよりも長めに時間がかかったのは、雪が少なくて、岩場でのアイゼン歩行が長かったためでしょうか。

それでも、念願の大槍を見ながらの残雪期の北鎌は、快晴無風のコンディションに恵まれて、とても美しいものでした。これを書いている今でも、目を閉じると空に突き上げる黒い三角錐が浮かんできます。

Fさん、Nさん、ご一緒いただきありがとうございました!

【行程】

1日目 上高地(5:30)-横尾(8:00)-大曲(11:30)-水俣乗越付近(13:15)-北鎌沢出合(15:15)

2日目 北鎌沢出合(3:45)-北鎌のコル(6:15)ー独標取り付き(10:30)-独標(13:15)-P13とP14間のコル(17:15)

3日目 幕営地(5:00)-北鎌平(8:00)-槍ヶ岳山頂(11:30)-槍ヶ岳山荘(12:15)-上高地(17:45)

【装備】50mロープ×2、スノーバー、カム(#0.3, 0.5, 1, 2)、ハーケン等

シン