前回のシンさんと行った錫杖岳左方カンテの帰りに、シンさんから「人工で大ヤスリ岩を登れるルートがある」と聞き、そのようなルートがある事を初めて知りました。その名は「ハイピークルート」。全3ピッチで最後のピッチは40メートル全てをアブミの人工登攀らしいです。瑞牆山一般登山道を通ってすぐにアプローチできるのも魅力。一般登山道しか歩いていなかった時期に初めて見た大ヤスリ岩、こんな岩は上級のフリークライマーしか登れないと思っていたのに、それが人工で登れるというのが何よりも魅力です。
という事でお盆休み初日にシンさんと私Fでハイピークルート行って来ました!渋滞を避けるために3:30に待ち合わせて横浜を出発。圏央道から中央道に繋がる八王子ジャンクションでちょっと渋滞にはまった以外は順調に走行。瑞牆山荘に到着し無料駐車場に駐車すると、連休らしく駐車車両は多めでした。
6:30に瑞牆山荘から登山開始!富士見平小屋を通過して尾根道に出ると本日登る大ヤスリ岩が見えました!天気は快晴っ♪瑞牆山は標高が高いためか朝はひんやり涼しかったです◎
一般登山道を歩いていると左側の間近にどっかーんと大ヤスリ岩が見えます。そこから少し歩いて左側を見ると、一般登山者が入り込まないようにロープが張ってあります。それを越えて30秒で取り付きに到着します。非常に分かりやすい◎
ハイピークルート取り付きまでハイペースルートで8時到着!
今回はシンさんに核心の3ピッチ目をリードしてもらう事にしました。まずは1ピッチ目。下の写真で私が立っている部分までは足元のクラックを登ります。ここからトラバースをして右のクラックに移りますが、このトラバースが難しいらしく、他の登攀記録ではA0を抜けている人が多い様子。
下の写真はトラバース前の位置から下のシンさんを撮影したもの。
私も登る前まではA0と思っていましたが、いざトラバースの前に立つと心に葛藤が生まれます。「いちクライマーとして安易にA0に頼っていいのか、俺」「いや、でもカナリこのトラバース怖い。しょっぱなでしゃしゃり出て怪我したらアホだな、俺」「いやいや、しかしクライマーならフリーで抜けようとする闘争心を持たなければ。俺は行ける。行け俺。A0したら負けだ俺。行けーっ」
半ば強引なムーブでトラバースを突破。その先のクラックの登り上げも、off-widthのクラックで、荷物も邪魔でかなり奮闘。やっと体が入る位置まで登り、チムニー内に体をねじ込む。さらに上部にチムニーが続いているが手元のヌンチャクを見ると、ビビッてランナーを取りすぎたためこの先の数が足りず。チムニー内でピッチを切りました。
本来1ピッチ目でつなぐ部分ですが、次のピッチはシンさんがリード。チムニー内を上部に登り、開けた部分を少し登って、幅広で傾斜のゆるいチムニーを登るルートです。初っ端のチムニーの登りから手掛かりに乏しく、ステミングでもバック&フットでも登りにくそうなチムニー。人工ルートだけにここにもリングボルトが豊富にあり、シンさんもそれを利用して登って行きます。
セカンドに続く私、再び心の葛藤が。「セカンドだぞ。A0に安易に頼っていいのか」「さっきは挑戦してフリーで抜けたじゃないか。逃げるな、俺。挑戦だ。俺!」
一手目に手を掛けた瞬間。。。いや、手を掛ける場所がない。。。。。。!!!「あっ!ヌンチャク持てばいいや!(^^)!」
という事で安全第一、A0祭りで2ピッチ目(本来の1ピッチ目)をセカンドで完登◎下の写真はパティオと他のブログでも言われている、大岩の間のオアシス。
パティオからの3ピッチ目は左上するダイクを登り、少しクラックのような所を登って、安定した岩の間を登ります。ここは本来2ピッチ目のようですが、そもそもこのパティオまで取り付きから1ピッチで登るのは長すぎるような気がします。1ピッチ目は支点も豊富(但し、リングボルトとかですが。)なのでやっぱり途中でピッチを切るべきだと思います。
3ピッチ目(本来の2ピッチ目)終了点は大ヤスリ岩基部の台座部分が終了点。その手前は広めのチムニーを突っ張りで登り上げる必要があります。私はリードでアブミを使用してしまいましたが、シンさんは突っ張りできました。結構怖そう。
台座部分に到着すると、瑞牆山山頂や一般登山道から丸見え👀
下の写真の奥の山頂が瑞牆山。
「すごーい、あんな場所に人がいるー」などの声が聞こえてきます。
最終ピッチの大ヤスリ岩本体!つるっとしてフリーで登れる気が到底湧いてきません。フリーで登れる人マジ凄すぎ!
シンさんがリードします!アブミを使用し、リングボルトに掛けて完全な人工登攀で登って行きます。
シンさんの位置から下の私を見た様子。高度感ヤバすぎ(/・ω・)/
シンさん自作のインチキ棒。事前の情報だと、ルート開拓者の身長が高かったらしく、リングボルト間隔が長いので、アブミの最上段に乗っても次のリングボルトに届くか怪しい場所があるらしかったため作成してくれたものです。しかし、最近登った人が長めのスリングを残置していったらしく、比較的新しめのスリングが垂れていたので、次のリングボルトにアブミが掛けられないなどのようなことはありませんでした。しかし、間隔はやはり遠く、アブミの最上段に乗る必要も数多くあります。リードはやはり高度感も相まって怖いと思います。身長が低い人のリードも厳しいものになると思います。ちなみに175㎝くらいあれば最上段に乗って行けば次のリングボルトに届かないことはありません。シンさんはリングボルトを1本や2本飛ばしでランナーを取って行きましたが、12本のヌンチャクを使用したようです。多めに持っていくに越したことはありません。
さて、セカンドの私。台座部分から終始聞こえる一般登山者の声。
「すごーい、あんなところ登ってる」「えー、あれ登れるの?」「こわーい」
やばい、俺の中の自尊心が満たされていく。
「うぬぼれるな、俺。」「声は気にするな目の前のリングボルト、アブミに集中しろ。登攀に集中するんだ、俺」アブミの登攀を開始する。
山頂の方→「キャー、あんなとこ登ってるー!すごいねー」
「そういえば、他の人のブログにも『山頂からの歓声に気を良くする』なんて書いてあったな。んっ、『書いてあったな』だと。俺は半ばそれを期待してここに来た部分もあるのでは。いや、違う。俺は純粋に大ヤスリ岩を登るためにここに来たんだ。登りに集中しろ、俺」
一般登山道の方→「見て―、あんなところ登ってるー、こわーい」
「凄いだろー!高いんだぞー!凄いんだぞー!、待て、俺。うぬぼれるな。フリーで登ったらすごいが、俺はいま人工で登ってるんだ。しかもセカンド。かなり楽な部類。自尊心を満たす権利は無い状態だ。煩悩に支配されるな。目の前の岩、というよりリングボルトに集中しろ!俺」
という事で、終始煩悩に支配されたまま歓声にたっぷり気持ちよくなって大ヤスリ岩の登攀終了☺
大ヤスリ岩山頂からは瑞牆山頂が目の前(奥)!
横になったりして、この景色と、さわやかな風、独占した空間をしばし楽しみました♪
雷鳴が聞こえて来たので、下降します。大ヤスリ岩山頂で雷雲に当たったら、人間避雷針状態になってしまう。
当然のことながら懸垂下降も高度感半端ない。下降が長いので、手袋などを持ってきた方がよいと思われる。素手だと結構熱くなってしまった。
大ヤスリ岩の台座まで下ったら、大ヤスリ岩に向かって左側に一般登山道側に15メートルほど懸垂下降。少し樹林帯をトラバースして一般登山道に合流します。とりあえず山頂まで登って、大ヤスリ岩を山頂から眺めてみます。
大ヤスリ岩片手持ち!指先付近に先ほどまで立っていました。カッコイイ♪
瑞牆山という事で横浜からアクセスも良く、一般登山道からアクセスも良く、そして人工登攀の練習が出来て、歓声を浴びることが出来て、大ヤスリ岩先端の気持ち風にあたることができる良いルートでした!楽しかったです!お疲れさんでした!
F
コースタイム:瑞牆山荘6:30→ハイピークルート取り付き8:00→大ヤスリ岩台座到着10:20→大ヤスリ岩先端11:40→一般登山道に下降→瑞牆山山頂13:20→一般登山道経由→瑞牆山荘14:50