谷川岳東尾根に行ってきました。
バリエーションルートの東尾根を登れるのは天候と雪が比較的安定する2月下旬から3月中旬の間、特に雪の状態によって難しさは大きく変化するということで、念入りに天気予報を確認しました。前日の金曜日に前線が通過するものの、土曜日は移動性高気圧に覆われ、晴天かつ気温は低めという良いコンディションになりそうだったので出発を決めました。メンバーはせんさん夫妻と私の3人。
4時にベースプラザを出発したところ、外は小雪が横に降ってます。風があるのは想定してましたが、天候の回復が遅れている? とりあえず暗闇の中を一ノ倉沢に向かいます。
出合らしき場所に着きましたが、3人とも積雪期の一ノ倉は初めて。暗い中でいまひとつ自信がありませんでしたが、薄明るくなってきて一ノ倉が姿を見せました。本谷は巨大なデブリで埋め尽くされており、上の方は雲に包まれて恐ろしげな雰囲気です。
デブリの間を縫って進み、左手に一ノ沢が見えてきました。V字に切れ落ちたところのシンセンのコルをまずは目指します。
一ノ沢は恐れていたほどのスライダー状態ではないものの、雪は硬く締まっていて、細かいデブリの跡の凹凸を使いながら登っていきます。
登るにつれてだんだん斜度は増していき、ダブルアックスで慎重に登っていきます。
ようやくシンセンのコルに抜け、ここから東尾根に入ります。一ノ沢を登っている間はコルの上の雲がすごい速さで飛んでいっていたのですが、幸い登る頃には風も落ち着いてきて、青空も見え始めました。右上は東尾根から見下ろした一ノ沢。
コルからブッシュを這い上がって進むと、第二岩峰が現れました。ここはせんさんリード。凹角を登るということでしたが雪が少ないためか?よく分からず、残置スリングの垂れた手前右の岩を右上に回りこむように1Pで登りました。
第二岩峰を抜けると、美しい雪稜が伸びています。左手のマチガ沢はガスの中ですが、すっかりいい天気になりました。おそらく私達が今日最初のパーティですが、しっかりトレースも残っていて雪質も良好。ありがたいコンディションです。
今年は雪解けが早いようで、ごっそりグライドしているところも・・・。回り込んで急な雪壁を登ります。幸い、登攀用ピッケルが気持ちよく効いてくれます。
東尾根のハイライトのナイフリッジのトラバース。雪が緩いと怖いだろうなと思われるところです。と言うか、アイゼンがばっちり効く状況でも私には怖い…。
ナイフリッジを振り返ったところ。
第一岩峰手前、慎重にクライムダウン。
第一岩峰の基部で小休止。東尾根に入ってからはほとんど休める場所がありませんでした。後続の2人パーティに先に行っていただきました。
私がリードで取り付きましたが、短くてガバだらけに見えるものの、結構立っているのと岩はつるつるしていてホールド感が弱く、早々にインナーグローブだけにしてどうにか突破。先行パーティは登ってすぐのブッシュで支点を取ってましたが、もう少し進んだ小ピークが安定していたのでそこでスタンディングアックスでビレイ。
ところが、テンションがかかった後ロープが動かず、声はかすかに聞こえるものの内容までは聞き取れません。「これは何かあったのだろうか」とロープを仮固定して下降の準備をしていると、作業している間に末端が解除されているのに気がつきました。第一岩峰は雪の状態次第で右手の雪壁からも巻くことができ、すでに1パーティ上がってきていたのでそちらから登ってくるのかもと思いましたが、状況が分からないのでスノーバーを支点に懸垂の準備をしていると2人が巻いて上がってきてほっとしました。今回は幸い問題なかったものの、何かトラブルが起こった際にどう行動するかは普段から話し合っておく必要があると感じました。
あとは山頂の雪庇に向かって最後の登攀。さすがに雪も日射で緩んできましたが、すでに切り崩されている雪庇のところを這い上がると、山頂の標識の目の前に出ました。
山頂には驚くほどたくさんの登山者がいました。素晴らしい天気です。
肩ノ小屋の前でゆっくり休んだ後、西黒尾根から下山。西黒尾根から見た東尾根です。
これ以上はないというくらい恵まれたコンディションで、青空と真っ白な雪の登攀を楽しめました。時間的にも順調でしたが、初級バリエーションという割には、取り付いたら敗退困難なルートで、状況の判断や、気の抜けなさなど私には難しく感じました。せんさん夫妻、ご一緒していただいてありがとうございました。
<行程>
ベースプラザ(4:00)-一ノ倉沢出合(5:00)-シンセンのコル(7:00)-第一岩峰基部(9:30)-山頂(10:50)-肩ノ小屋(11:00/11:30)-ベースプラザ(13:50)
シン