穂高岳滝谷のドーム中央稜とクラック尾根を登ってきました。
メンバーはFさん、もちさん、私シンのACY変〇パーティ。去年の海の日の三連休でも計画したのですが、その時は天候不良で葛根田川に転進。今年はちょうど梅雨が明けて天候は問題なしで決行に移しました。
前夜に横浜を出発して新穂高に4時前に着きましたが、好天の三連休とあって新穂高はもちろん、鍋平の駐車場も満車で入れず。錫杖へのアプローチで使われる中尾高原口の駐車スペースにようやく止められ、4時半にスタート。できれば1日目にドーム中央稜を登りたいと、暗いうちにスタートして白出沢入口で明るくなるくらいにしたいと思っていたのですが、新穂高に着いたところですでに5時。すっかり明るくなってしまいました。三連休の混み方を甘く見てました…

6時過ぎに白出沢ルートに入り、よく整備されていますが、鎖やはしごが続くところもあり、登山道としては難易度は高めな印象です。

上に穂高岳山荘の石積みが見えてからも一向に近づかないガレ場の登りが延々と続き、10時に穂高岳山荘に到着。コースタイム9時間のところを5時間で登り、さらに中尾高原口から新穂高までのおまけつき、頑張りました!

この時間なら今日中にドーム中央稜をアタックできるかな、ということで北穂に向かいます。涸沢岳を越えて、険しい岩場の上り下りを繰り返す縦走路を進むと、目指すドームが見えてきました。確かにドームの名前がふさわしい岩壁で、中央稜は西壁(左面)を登るルートです。

ドーム手前で縦走路から少し下りたところに荷物をデポしてギアを装着。下に向かってやや右手に下りていくと懸垂支点があり、50mロープ1本で1回懸垂してルンゼ状地形に降り立ったもののその先がよく分からず、しばらく手分けして探し回りました。

ルンゼを下りて行ったところの懸垂支点で垂壁を懸垂で下りてみたところ、踏み跡が右手に続いており、これをたどって回り込んでいくとドーム中央稜取り付きでした。

私ともちさんが下りてきたのはドームと第三尾根の間のルンゼで、Fさんはトポに書かれている第三尾根の向こう側の下降路を探しに行っており、後続の2人パーティに一緒に懸垂させてもらって、第三尾根のT2から登り返してくる形で合流できました。ありがとうございました。どうやら出だしの下降から、もっと左手に下りる下降路があったようです。初見でのルートファインディングの難しさをあらためて感じました。2時間近くかかって14時過ぎになってしまいましたが、まだ時間的にはいけるかなということで登攀開始です。

ドーム中央稜の出だしは凹角の壁で、稜?という感じもしますが、凹角部分にクラックと、その左手にも広めのクラックがあります。冬にも来たことがあるという後続2人パーティに先に登っていただきましたが、お二人は左手の派生ルート?の方を登られるそうで、同時に登らせてもらいました。ドーム中央稜は3ピッチ目の歩きも含めて5ピッチで、前半をFさんリード、後半をもちさんリードで登ることにしました。下降し始めたときは青空でしたが、ガスが湧いてきました。
1P目(V-/40m)Fさんリード。凹角のクラック沿いに登っていくと、最後は狭いチムニーになりますが、荷物を背負っていて通れなかったので、外に出て突破。


2P目(IV/40m)Fさんリード。凹角のクラックに沿って登っていってカンテに出て、最後はスラブを左上。

3P目(50m)はリッジ上をロープを引いて歩き。もちさんにリードを交代しました。ガスの中に浮かび上がるドームの上部壁が城砦のようにそそりたっています。

4P目(IV/40m)、もちさんリード。凹角を登って最後はチムニー。すみません、このあたり眠気で記憶があいまい…3人ともビレイしないで待機している間は仮眠状態でした。

5P目(IV/40m)、もちさんリード。ここも凹角。滝谷の岩はクラックが多いですが、フェース部分はつるりとしていてホールドが乏しく、凹角やクラックに沿ってルートが開かれているようです。探すと鋭利なフレークなど良いホールドがあるので、本格的なジャミングを求められるところはあまりありませんでした。岩質はおおむね硬いですが、時々動くものがあるので要注意です。支点はハンガーボルトで整備されていました。

アプローチには時間がかかってしまいましたが、登攀は順調で17時に登攀終了。ずっと左手を並走していた2人パーティもほぼ同時に到着して、残置ハーケンが1本もないところを登ってこられたそうで、かなり手強かったようです。

ガスに覆われていて終了点から先がよく分かりませんでしたが、やや左手に進んでいくとドームを左から巻くようにして縦走路に出ました。もう少し右手から縦走路に戻るルートもあったのかなという気がします。
荷物を取りに戻って、北穂高のテン場へ。

小屋で受付すると、22サイトに対して24組目で、なんとか張れそうなところを探し、日没前に設営できました。Fさんが作ってくれた、もやしとにんにくたっぷりのバリカタラーメンの夕食をいただいて、すぐに就寝。だいぶ岩がごろごろしていて、特にFさんの下はかなり傾いていたようですみません…

2日目はクラック尾根を登るため、2時半起床、棒ラーメンの朝食を終えて3時半出発、4時に北穂高小屋のテラスで準備を整えました。

薄明るくなってきた空に槍の穂先が見え、今日も良い天気のようです。

大キレットへの縦走路をしばらく下ったところで、×印が書かれたリッジの方へ少しそれると、B沢への下降点がありました。丁寧に「B沢入口」とペンキで書かれています。


入口から見下ろすと、暗さもあってなんとも陰惨な雰囲気の狭いガレ場が続いていて、これを下りるの?という感じです。足を踏み入れると、ほとんどすべて浮石状態で、気を付けてもどんどん石が落ちていき、せめて岩雪崩を起こさないように慎重に下りていきます。間違って大キレットを縦走する単独の登山者がついてきてしまって、もちさんが声をかけて引き返していきました。危ないところでした。

途中2回の懸垂を入れて下りていくと、少し傾斜が落ちてきて、尾根の末端に近づいてきた感じがしました。上からは後続パーティが下降を始めたようで落石の音がし始めました。だいぶ距離があってよかったです。


左壁にフィックスロープが下がっていて、壁に何本かピンが打ち込まれているところがあり、ここを上がって途切れ途切れにあるフィックスに頼りながら悪いガレ場を登っていき、行き詰ったところの懸垂支点で下に向かって左手に20mほど斜め懸垂して、少し斜めに上がったところにトラバース道の踏み跡があります。かつての横断バンドの一部と思われ、進んでいくと尾根を回り込むあたりで崩落していてそのまま進むのは厳しいです。上に向かって右上にかすかな踏み跡をたどって登っていくと、そこがクラック尾根の取り付きでした。思ったよりスムーズに取り付きにたどり着きましたが、初見では分かりにくいし、B沢のガレ場は悪絶レベルでした。

クラック尾根はトポでは9ピッチとなっていて、1~3Pをシン、4~6PをFさん、7~9Pをもちさんがリードという分担にして、6時過ぎに登攀開始。
1P目(III/40m)、階段状のフェースから凹角。残置ハーケンのほかカムでも支点が取れて、問題なく進みます。支点は残置ハーケン2本にカムで補強。昨日のドーム中央稜と違って、クラック尾根の支点はほとんどハーケンでした。

2P目(V/40m)、出だしの垂壁が威圧感がありますが、右手(手前側)はホールドやスタンスがあり、上がるとあとは易しいリッジで、V級はないように感じました。

3P目(III/40m)、露出感のあるリッジを進み、とがったピナクルを越えて旧メガネのコルに下降する起伏のあるピッチ。4P目以降の壁がそそり立っていて、両側は第1尾根と大キレットの主稜線に挟まれてアルペンムードたっぷりです。

ピナクルから先は積み木のような浮石だらけのリッジを進み、中間支点は取ってもロープが屈曲してしまうので、10m以上ランアウト。左手には下りてきたB沢が見えますが、とんでもない急傾斜で、よくあれを下りてきたものだと思いました。


Fさんにリードを交代して、4P目(V/40m)。ルートがいま一つ判然とせず、右手のフェースを進むとIII級となってましたが、おそらく左のクラックから左上してハングを突破したのでV級と思われます。

5P目(V/20m)、核心のジャンケンクラック。左の稲妻形のクラックがV級で、右手の凹角がIV級のようです。稲妻クラックから左上して、リッジに乗り移るところが露出感があり、ルートのハイライトという感じでした。


6P目(IV/30m)、脆い凹角からリッジとなっていて、脆い凹角ばかりだと突っ込みたくなりますが、ここを抜けると、これまでずっと日陰で肌寒かったところから日なたのテラスに出ました。

向こうには槍の穂先が見え、背後の大キレットの縦走路と同じくらいの高さを進む登山者の姿が見えます。ここでもちさんにリード交代。

7P目(III/70m?)はトポの版数によって80mと40mに記載が分かれていて、左手から巻くようにガラガラのルンゼを登っていきます。難しくはありませんが、浮石だらけでランナーも取れずランアウト。結局50mロープでは大テラスまで届かず、いったん切り直しました。
8P目(III/40m)、大テラスから左にトラバースして凹角を左上。真上のフェースにも残置ハーケンが見られたのでそちらも抜けられるのかもしれません。

30mロープを伸ばした小テラスのようなところで一旦ピッチを切りかけましたが、どうも9P目の「バンドを左へ」というトポの記載と合わない様子。もう少し上がってみます、と登って行ったところ、
もちさん「でちゃいました~」
Fさん「う〇こ~?」
もちさん「登山道に出ちゃいました!」
…というやりとりがあり、どうも縦走路に抜けた様子。フォローの2人も上がってみると、北穂高小屋のテラスのすぐ下に出ていました。トポの記載とは合いませんが、他の方の記載でもよく見る場所なのでよいのかな?真上のフェースを登ると、さらに小屋寄りに上がれるのかもしれません。

11時に登攀終了。登山者でにぎわう北穂高小屋のテラスで装備を解いて一休み。北穂高小屋から取り付きまでのアプローチが約2時間、登攀が5時間弱でした。

12時までにテン場に戻れたら、今日中に下山しちゃいましょう、と話していたので、テントを撤収して往路を戻ります。穂高岳山荘への縦走路、白出沢の長い下降で、最後は半ば意識が飛びながら、19:20に駐車場に戻りました。
2日で滝谷のルート2本を登攀して充実した山行でしたが、2日間での行動時間は30時間超、獲得標高4000mのなかなかの変〇山行でした。どちらも滝谷の岩場に包まれたような中で登る良いルートでした。お疲れさまでした!
【行程】
1日目 中尾高原口(4:30)-新穂高温泉(5:00)-白出沢口(6:00)-穂高岳山荘(10:00)-ドーム中央稜下降点(12:15)-ドーム中央稜登攀開始(14:30)-登攀終了(17:00)-北穂高小屋テン場(18:00)-北穂高小屋-北穂高小屋テン場(18:50)
2日目 北穂高小屋テン場(3:30)-北穂高小屋(4:00)-クラック尾根取り付き(6:00)-登攀終了(11:00)-北穂高小屋テン場(14:00)-中尾高原口(19:20)
【装備】50mダブルロープ×2、クイックドロー×15、カム(C4#0.3~3)1セット+α、ハーケン(不使用) (クイックドローは10本程度、カムは1セットで足りると思いました)
シン