元々は越沢(こいざわ)バットレスでマルチピッチ練習(20P目標!)の予定だった。しかし、天気がいまいちな予報となり、プランBとして雨でも関係ない沢登が提案された。そして、このプランBとして浮上した「剣ヶ峰大沢」が、プランAを凌駕してしまった。基本水が流れていない涸れ沢で、ホールドが乏しく岩はツルツル、ボルダーチックで時には肩車などで乗越すらしい。男くさい雰囲気が漂う剣ヶ峰大沢に、会の中でも比較的男くさい4人で挑んできた。
朝の9時に富士宮市の朝霧霊園に集合した。道中は久しぶりに普通の道で、車高の低い車でも大丈夫だ。霊園内の駐車場は、「奥の方ならお客さん以外も止めても問題ない」と非公式に許可をいただいた。そのまま駐車場の奥の方から林道を歩く。
最初の林道を30分ほど歩くとバーがある所に来て、バーをくぐりそこから続く別の林道を歩く。前方に富士山が見える気持ちのいい道だった。
そこから10分程歩いた辺りで林道を離れ樹林帯に入って行く。林業作業用にピンクテープが木に多数巻き付けられており、藪も刈られていて歩きやすい。方角を北東に合わせながら歩ける部分を辿って行くと入渓地点に到着した。ここの下りがグズグズの草付きで意外に悪い。
草付きを下りた安定した所で装備を整えた。そしてそこから沢床に下りるのだが、これもかなりいやらしい。ツルツルの壁をバックステップで慎重に下る。
Fjさんを先頭に4人で歩き始めると、いきなりちょっとした登りが現れた。(上の写真の中央少し上の壁)
リードFjさん、Tsさん、Nbさんと特に問題なく登って行く。僕の順番に来て岩を触ってみると、意外に難しい。まだこういう壁に慣れていなかったこともあるが、結構ひやひやしながら登り、最後はFjさんにお助けスリングを垂らしてもらった。先が思いやられる。
ここは涸れ沢のはずなのに、至る所の岩が滑らかに削り取られていて、見事に手がかりを消していた。ただ所々にある岩の割れ目に足がかかれば、それを頼りに登れるということが途中から分かってきた。
5分程歩くと、さっき苦労した壁より更に少しスケールの大きい垂壁が現れた。
微妙なスケール感だったが、リードのFjさんがフリーでトライする。最上部のトラバースが悪いようだったが、しっかりと突破し道を切り拓いてくれた。
登り切ったFjさんは、上がった先でハーケンを2本打ち確保支点を構築。僕は垂らしてもらったロープを中間エイトでビレイループにカラビナで掛け、ほぼストレスフリーで登らせてもらった。
しばらく安心して歩ける道を遡行していると、本日のクライマックスとなる大滝が現れた。
巻こうと思えば巻けるのだろうが、ここは何とか突破口を見出したい。そして、左側面のハングに弱点を見出しFjさんが、本日初のスタカットで取付いた。
ハングにはガバが2か所あるものの、0.3のカム(今回持ってきた一番小さいカム)が大きすぎて入らず、乗越すまでプロテクションが取れない。仕方なく、Fjさんはほぼフリーで上の棚まで登り切った。
そして、ここからハーケンを打ち、プロテクションを取りながら左にトラバース。
そして、軟鉄ハーケンを打ち、それにスリングで作ったあぶみを掛け更に一段上に上がった。フォローはスリングの代わりに本物のあぶみを使わせてもらった。
こうして、無事にリードがこのリアルアルパインを突破してくれ、上部でしっかりした支点を構築し、フォローが続いた。
4番手のNbさんがすべてのギア(カム、ハーケン、あぶみ)を回収しながら登って来てくれ、無事に全員第一要塞を突破した。
ここからしばらくは無事に遡行を続ける。今回、FjさんとTsさんは、肩車で突破する壁を探しながら歩いている節があった。そして、今沢登も終盤に迫り、おあつらえ向きのつるつる岩壁が現れた。
本日のメインイベントを終え、第二要塞に到着した。しかし残念ながらこれはどうにも弱点がなく、少し引き返し右から巻く。
少し歩くとすぐに第三要塞が現れた。しかし、ここが今までで一番悪くどうにもならない。
またしても右から巻き、その先は歩く価値もないのでここを脱渓点とした。ここからは涸れ沢の左岸のすぐ上の尾根を歩き、駐車場まで無事に帰還した。
今回は初めての沢リアルアルパインだった。0.3未満のカム、ハーケン、あぶみなど今まで縁のなかったギアが、窮地ではかなり有効なようだ。次のカモシカのセールでとりあえずエイリアンを買ってみよう。