前日、湘南鷹取山でセルフレスキューの実地訓練を行い、本日は日本勤労者山岳連盟神奈川県連盟の事務所で机上講習を行った。午前の部は、約60年に及ぶ会の歴史の中で3つの顕著な遭難事例を、当時会長をしていたOさんによる解説で振り返った。午後の部では、消防隊員でもある会のメンバーのMさんの指導の下、ファーストエイドで行われる救護活動をペアを組んで実際にやってみた。
遭難が発生した場合、今後の教訓にするため会では詳細な事故報告書を作成する。
「いったい何が原因だったのか?」「今後どうすれば事故を防げるのか?」
実際には確実な原因究明が叶わないケースも多いのだが、私が感じ取ったレッドフラグや重要なポイントを列挙してみる。
レッドフラグとしては、山行計画書の提出がぎりぎりだった場合だ。会では一般山行の場合は4日前まで、バリエーションルートの場合は10日前までに山行計画書を提出するのが基本ルールとなっている。もちろん、これに間に合わなかったからと言って必ずしも事故につながるわけではないが、そこには準備不足だけではなく多少の「迷い」があるのではないかと、自分の経験からも感じる。特に自分の能力より少しストレッチしたルートを行く場合は、この迷いの払拭が大事になってくる。
次に重要さを再認識したことは、パーティー登山におけるリーダーの役割だ。パーティーの技術・経験が一様でない場合、リーダーが危険を予見し的確なアドバイスを出せるどうかが安全登山の鍵だ。そうすることによって、事故を未然に防げる可能性は格段に上がるということ学んだ。技術的に優れていても、必ずしもリーダーとして優秀とは限らない。経験の低いメンバーがいる場合は、特にリーダーの人選がとても重要になってくる。
遭難事故の振り返りで神妙な雰囲気が広がったが、ここでランチ休憩。午後からは気を取り直してファーストエイドの実演練習だ。机を片付け部屋の中央に広いスペースを作った。
意識がない場合などで重要なのが気道を確保することだ。仰向けの場合は、のどに舌が落ち込んで気道をふさいだり(舌根沈下)、嘔吐物がつまる可能性がある。上がその気道確保ができる体位(回復体位)
また上のキッドは、皮膚に枝などが刺さり流血しているのをイメージしている。このような場合、水で傷口を洗い流すのが有効らしい。小さな穴をあけたペットボトルの蓋でシャワーの様にして洗い流すと水の節約になる。
出血がひどい場合はまず止血をすることが重要だ。テーピングを使いしっかりと圧迫する。雪山などでハードシェル等を着ている場合、出血個所を特定することがそれほど簡単ではない。その場合は、体の各箇所を実際に触り、出血個所を特定することが有効だ。ファーストエイド全般に言えることだが、血液などに直接触れることを避けるため、ニトリル手袋を用意しておくことを忘れずに。
三角巾もしっかり使えるように練習する。ちゃんと使えれば十分役に立つ。折り曲げた腕の下に固定する添え木を入れ、痛くならないように場所を工夫して肩で留める。最後に腕がぶらぶらしないように帯状にした三角巾を手前から背中側に回し固定する。
登山でありがちな足首のひねりによる捻挫。しっかりテーピングで固定できるようになっておこう。ちゃんとやれば、かなりちがちに固定できるようだ。
胸骨圧迫訓練には500mlのペットボトルが使える(残念ながら写真なし)。手を組み合わせ、肘を伸ばし、手のひらの一番固い所でペットボトルをぐっと押し込む。なかなかにちょうどいい手ごたえがある。
ファーストエイドの厄介なところは、実際に使うケースが滅多にないため、知識が定着しにくいことだ。会では年に一度遭難対策訓練でファーストエイド講習を実施しているが、各人がそれをきっかけにして知識の定着に努めることが肝要か。