2020年8月8日~10日 甲斐駒ヶ岳赤石沢奥壁Aフランケ赤蜘蛛ルート(アルパインクライミング)

2020年8月8日~10日 甲斐駒ヶ岳赤石沢奥壁Aフランケ赤蜘蛛ルート(アルパインクライミング)

なぜ「赤蜘蛛ルート」を選んだのか。

それはもちろんこの名前が理由。江戸川乱歩の「黒蜥蜴」にも似たこの妖艶な響き。多くの場合、爬虫類や危険な昆虫の名前の前に個性の強い色や「毒」というような危険な香りのする名詞が入った呼び名は、近づき難いイメージを持たせつつもそれを垣間見たい強い誘惑に駆られる。「紅サソリ(隊)」(クレヨンしんちゃん)、毒蝮三太夫、etc。

ということで今回は私Fが昨年より行きたかった甲斐駒ヶ岳赤石沢奥壁Aフランケ赤蜘蛛ルートにシンさんと行って来ました🙆

まず、第一の核心は拠点となる七丈小屋のテント場の予約が取れるかっ。コロナ禍のため山小屋も人数制限をしての営業であるため予約必須。2週間前までは予約満杯でしたが、何とかキャンセルが出たところを狙って2泊分テント場確保できました。

 

さて、まずは日本三大急登に数えられる黒戸尾根を登ります。ギアとテント泊装備で当然重くて辛いです。ところで、小屋もテント場も宿泊人数制限があり、北沢峠方面のバスは運行していないためか、一般登山者は極度に少なく、その代わりに黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳山頂を日帰り往復すると思われるトレラン族が大勢いました。トレラン族はほぼ短パンであり、すれ違った登山者の8割方は短パン族でした。

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5時間で小屋に到着。頑張った💯

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テントを張ったら明日に備えて赤蜘蛛ルート取り付きを偵察することにしました。小屋から8合目まで40分位登り、八合目鳥居跡(柱が残っている)を過ぎて200mほどのところの左下に岩小屋発見!8合目から平らなところを歩いて、山頂に向かう岩が迫ってくる手前のところを左です。登山道の2メートルくらい左下。

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岩小屋から斜面下を見て右側の踏み跡は「八丈バンド」に続くものと思われる。よってAフランケへは左の草付きのざれた斜面に続く踏み跡に従って歩く。

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確かに踏み跡や赤テープ、フィックスロープとかあるが、「明瞭」と言えるほどでも無く、さらにフィックスに頼らざるを得ない場所もあり、悪い道が続く。

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下の写真2枚は同じところの写真。他のブログでも紹介されている「迷いやすいかな」と思われるポイント。下の写真1枚目の黄色が岩小屋。赤い矢印のように岩小屋前をスイッチバックして下降していくのが正解。2枚目の写真を見るとわかる様に下降する場所の木のところにスリングがかかっている。ちなみにこの岩小屋は赤蜘蛛ルート終了点の岩小屋とは別の物。終了点の岩小屋にアプローチ道から行きつくにはここに至るまでの途中で右の踏み跡を追う必要がある。何とも説明が難しい場所だが。。。

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草付きの中を下降していくフィックスロープに従うとやがて八丈沢に行きつく。沢に出る手前はアザミの生い茂る中を歩くイタイタ地帯🤕

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下の1枚目が八丈沢の下方の様子。2枚目は上方の様子。沢に従って下降していく。

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下の写真1枚目の赤矢印のように八丈沢から離れて右の壁側の踏み跡に入る。下の2枚目の写真は右の踏み跡に入らなかった場合の八丈沢下方の様子。懸垂下降が必要なほどの急角度になるので、自然と右の踏み跡に導かれると思う。

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八丈沢を離れてしばらく岩伝いに歩いて行くとやがて岩壁が見えてくる。赤蜘蛛ルート取り付きとは別の岩壁。下の2枚目の写真は岩壁前を流れる水流。いつもあるかは定かではない。私たちはこの水流で翌日も水を補給した。

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前述の岩壁を右に見ながらそのまま歩いて行くと、岩壁に面と向かって左端のところに下の写真2枚目にある様に下降用のフィックスロープをのぞくことができる。

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フィックスロープを下った後に少し歩くと例のギザギザのAフランケ赤蜘蛛ルート取り付きの岩が発見できる。

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とりあえず取り付き横の花を愛でてみる💖

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取り付きから下方の様子。

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で、重要な上方の様子。

かっこいー!なにこれ日本の景色???

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ここから甲斐駒ヶ岳一般登山道8合目まで登り返して、テント場に戻る。本日の歩きですでに虫の息。15時30分くらいにテント場に着いたので10時間行動位。

 

 

翌日は3時半頃にテント場を出発!

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月夜と、日の出前に十分明るくなっていることを期待して早出したが曇っていたため暗すぎるので八合目岩小屋でしばし休憩。4時50分頃に出発。

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前日の偵察のお陰で無事取り付きに到着🙆

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例の「遠い2ピン目」ですが、上の写真のシンさんがセルフを取っているボルトが1ピン目で、下の写真の赤丸部が2ピン目。下の写真でもシンさんがセルフを取っているピンが見えます。「届きそう」なんだけども、1ピン目がハング部に付いているのでアブミでハングを上手いことこなせないと2ピン目に届かない。チョンボ棒ももってきていないので、私たちは中国雑技団方式の私が下、シンさん上の肩乗り方式で2ピン目にプリクリップしました!

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本日もすっきり赤石沢奥壁が見えてます!七丈小屋の主人の話だと小屋やテント場の宿泊者で赤石沢奥壁に登っているパーティーはいない模様。岩小屋にも誰かが泊っている様子はなかったので、おそらく本日は私たちパーティーの完全貸し切り。ありがたいコンディションです◎

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1ピッチ目のアブミルートはシンさんリード。事前の情報通り抜け口が悪い。レッジにマントリングする部分でガバも無いし、その手前のアブミ支点も結構下にあるので、なかなか胆を冷やします。あと、ハーケンやリングボルトの間が結構空いている部分があったので、フリーでこなさないならばアブミ支点として早速カムを使います。核心前にカムのアブミに慣れておくのも良かろうかと。。。

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2ピッチ目は私のリード。クラックのフリーセクション。「快適」というほどの技量は持ち合わせていないが、まあ確かにハンドサイズの良いクラックが延びている。

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で、トポだと2ピッチ目は40m伸ばすのだがハーケンの間に取って行ったカムも無くなり、上方に見えるハーケンも間隔が広くてカムがないと不安、登りだしから20mくらいの場所に下の写真のような確保支点があったのでありがたくピッチをここで切る。

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トポの2ピッチ目の続きはシンさんにリードを依頼。フォローで行ってもなかなかしびれるクラック。クラックに草が茂って快適とまでは言えず、さらにフットジャムが奥まで入らないところは足の指がなかなか痛む😢

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トポの3ピッチ目。自分たちの4ピッチ目。アブミを使ってV字ハング下まで。

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下の1枚目がV字ハング下の確保支点。2枚目の写真がV字ハングと思ったけど、これではなかった。これは敢えて言うならば「V字ハング前の小文字V字」。リングボルトに従い小文字のV字は左から抜けていく。

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トポの3ピッチ目をフォローで登るシンさん。既に高度感あり!

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下の写真は先ほど上方に確認した小文字V字ハングを越えて、V字ハングを登るシンさん!アブミでこのV字ハング乗越がなかなか厳しい。ちなみにトポ(日本の岩場)ではV字ハングの手前左側に確保支点がある様に書いてあるが、そのようなものは途中見当たらなかったので、小文字V字ハングの手前で私たちのようにピッチを切るのが宜しいのかと。。。しかしそこからだと50メートルロープだとちと短いのか、目検討でロープ残り10メートルとなったところでリードするシンさんに「残り10メートル」とコールしたが、結果的に大テラスのちょい手前でピッチを切らせてしまった。伸ばせて行けないことも無いかもしれないが、初めてのルートなのでまあ安全に切れる場所でピッチを切るのが宜しいかと。60mロープだったらこのまま大テラスに到着できると思われる。あるいはトポでは小文字V字ハングには触れないコース取りか???

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大テラスはこんな場所。「大」とは付くが岩登りの世界の話であり、常人がここで昼寝ができるかと言ったらそうでは無いと思われる。しばし休憩。

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とりあえず花をここでも愛でてみる💓

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大テラスで岩に向かって右側にもボルト連打のルートが見えるが別ルート。素直に大テラス正面の木の生える凹角を登りスラブ面に連打された支点を追っていく。シンさんリード。

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大テラスからのピッチ終了点。イコール次の核心の確保支点。ここの支点は足場が不安定。前に別パーティーがいる場合はここの支点で2パーティーが待つのは辛そう。大テラスで順番待ちをするのが宜しいと思われるが、大テラスから核心ピッチの様子が見えたかはちと覚えていない。。。

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ごちそうさまですっ!核心アメリカンエイドルートを頂戴いたしましたっ!ビビりなもので時間をたっぷりかけて登りました!後続パーティーが居なくて良かったー。垂壁を空に向かってただ真っすぐに登る快感😭

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どこからどこまでがアメリカンエイド(カム設置によるアブミ登攀)なのかははっきりとは言えません。ハーケンやリングボルトがかなり離れていてその間をカムでつなぐところがぽつぽつあったというような印象でした。どこに何番のカムを残置して置くのかはなかなか選択が難しいとこです。ナッツも比較的決まると思います。カムの0.75番や0.5番、1番なんかがはまる場所が多かったような印象です。フォローのシンさんは前進用に1番、0.5番、0.3番のカムをもっていました。

 

ハンギングビレイ点からフォローのシンさん!なかなか日常生活で無いシチュエーション。

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上方に見える右側の恐竜カンテと左側のスーパークラック。「スーパー」の方を登る人は本当にスーパーマンだとつくづく思う。

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シンさん合流!

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恐竜カンテ方面へレッツゴー!シンさんリード

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恐竜カンテ方面にちょっと進んだところからシンさんよりハンギングビレイ中の私を撮影。スゲ―高いところで、何年か前に打たれたリングボルト3本に、まあまあの時間命を預け続けているという非日常。夏休みのいい日記が書けそうです😱

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恐竜カンテ向こう側に消えていくシンさん。お互いそれぞれの壁面に一人ぼっちのやはり非日常。

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恐竜カンテフォローにて。再開を喜ぶ苦し紛れの手放し(会のFunaさんに今回の山行前に『エイドならフィフィあった方がいいっすよー』とのアドバイスを受けて直前購入したフィフィが超役立った!ありがとう!この写真もフィフィにてレスト中)。

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一応開けた解放感のあるルートとしては最後のスラブルート。フリークライミングのゲレンデならばフリーでチャレンジできるところだが、安全にアブミにてピッチをこなす。

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この後は樹林帯に入る。次のピッチは樹林帯の中のそれらしい踏み跡というか岩の部分を80m位登り上げていく。この樹林の登りも危ない部分が残るのでロープにて確保は続けるべきであると思う。ルート全体としてトポ(日本の岩場)のピッチ距離よりも8割くらいの長さのピッチが多かったような気がする(40mとトポにあれば、実際は30mくらいというような)。

終了点の岩小屋到着!天井にリングボルトが何本も打ってあり、取り付きまでのアプローチに設置してあるものと同じようなフィックスロープも置いてあったので、整備して頂いている方が資材を置いていると思われる。

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終了点の岩小屋から踏み跡を慎重に追って8合目岩小屋を目指す。この踏み跡はAフランケ取り付きまでのアプローチ道と合流するが、合流点に気が付かず私はそのまま赤テープを追って、八丈沢に下降する方向に進んでしまった。シンさんの指摘により気が付いて正しい道に戻った。終了点岩小屋から8合目岩小屋までは下る部分は無く、登り続けるのみであるので、「下ったら間違い」と思った方が良いと思う。

今回の山行ではシンさんの適切なルートファインディングに非常に助けられた。

 

カナリのヘロヘロ状態で8合目岩小屋を目指す。

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一般登山道に合流!かなり疲れた。。。よかったまだ明るくって。

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19時にテント場に到着!激動の1日でした!

 

翌日も晴れ☀素晴らしい3日間でした!

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下山も短パントレラン隊と数多くすれ違いました。

その中ですれ違った1人にかなりの猛者がっ!トレランの世界にワラーチという、傍から見たら「それビーサンじゃん」と思うシューズがあるのは知っていたが、ついに「素足」で黒戸尾根を登る人物がっ!もはや追い求める人の世界は常人には理解できません。

そんなこんなで甲斐駒ヶ岳神社に到着!川沿いは川遊びをする人で大賑わい。市営駐車場は満車でした。

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好天、ルートの独占、空いている一般登山道等など非常に恵まれた環境で赤蜘蛛ルートを登ることが出来ました。登攀中はもちろんのことシンさんの適切なルートファインディングには非常に助けられました!ありがとうございました!

長いアプローチで厳しいものではありましたがアルパインアルパインした良いルートを無事に登ることが出来て何よりでした!

ちなみに今回、疲れた時に頭で繰り返し流れた曲は、子供が見ていたアニメで流れていた「にんじゃりばんばん」でした。

 

F

 

<コースタイム>

1日目:5:00甲斐駒ヶ岳神社→9:40七丈小屋10:50→11:30八合目岩小屋→13:30赤蜘蛛ルート取り付き→15:30テント場着

2日目:3:30テント場発→4:20八合目岩小屋4:50→6:10赤蜘蛛ルート取り付き7:00→17:20終了点岩小屋→18:16八合目岩小屋→18:54テント場着

3日目:6:30テント場発→10:00甲斐駒ヶ岳神社市営駐車場着