2019年5月18日、19日登攀訓練

2019年5月18日、19日登攀訓練

2日間の日程で登攀訓練を行いました。

18日の参加者は、センさん、NABさん、私の3名です。場所は甲府の太刀岡山です。
本日のお題は「カムの使用に慣れてみよう」「カムを信頼してみよう」ということで、左岩稜の下部クラックを使用して訓練しました。

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最初は2ピッチ目まで登り、しっかりした支点にシングルロープのトップロープでバックアップを作成します。
そもそもクラッククライミングの経験が浅いため、ジャミングのいい練習にもなります。
ジャミングを決めて、適切なカムを選んで、プロテクションを取って、再び登る、という一連の作業が簡単ではないことを思い知ります。やっぱり訓練は重要です。

さらにトップロープ設置後にリードで最初に登った時に使用したカムが回収できない問題が発生!ナッツキーでこねくり回してどうにか回収しました。ナッツキーで回収するにしても簡単ではなく、ガチャガチャやっているとどんどん奥にカムがはまり込んで行きました。これも本番で発生したらかなり焦ります。やっぱり訓練は重要です。

次はトップロープでバックアップを取りながら、ダブルロープでの普通のリードクライミングを行ない、カムを決めてから落下テストを行います。下の写真の位置の胸付近にカムをはめ込んでいます。落下してみるとしっかり停止。カムもしっかり決めれば微動だにしません。

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しかし、上の写真の部分で再び0.5番のキャメロットがガツはまりして抜けなくなりました。ナッツキーやハンマーを駆使してどうにか抜き出しました。危うく7千円を捨てることになる所でした。

カムはロープの揺れで簡単にクラックの奥に歩いてしまう事、小さいカムははまり込んで抜けにくくなることを学びました。これも訓練の賜物。素晴らしい!

という事で、1日目はクラッククライミング、カムのセッティング、はまったカムの取り出しなどを学んで終了しました。

左岩稜の純粋な登攀は後日行うことにして、帰宅の途に着きました。帰り際に寄った竜王のマーラーメンは山椒てんこ盛りで美味しかったです♪翌日のおトイレが心配です。

 

 

 

続けて2日目は丹沢のモミソ岩で訓練を行いました!前日のマーラーメン後のトイレは問題なかったです◎

本日の参加者はくまさん、せんさん、さとさん、私Fの4名です。

登攀訓練前に草むらにて、案の定ニョロっとしたあいつに出くわしました。そんな時期です。

さて、まずは自分で打ち込んだハーケンで懸垂下降を行います。

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「岩登りあるある」として、既に打ち込んであるハーケンは信用できるが、自分が打ったハーケンは信用できないという人は多いと思います。

しっかり効いたハーケンは懸垂下降ごときでは微動だにしませんでした。そもそもそれで微動していたら墜落を止めるなど到底できませんが。。。

自分で打ったハーケンでの懸垂はそうそう行わないので良い経験でした。ハーケンへの信頼度が増しました。

 

次は懸垂下降でのロープ連結部の通過練習です。セルフレスキューなどの際にロープを連結して一気に下降することを想定した訓練です。

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これも実際にやってみてわかることが多いです。まず、ロープの連結について、束ねて8の字はT字方向の引きに弱いので論外。ダブルフィッシャーマンは信頼度は高いですが、結び目が固まるとほどけにくい。オーバーハンドノットで末端処理をしたものだとスムーズにほどくことが出来ました。

次に結び目の通過ですが、下降器を一つしか持っていない場合を想定したので、通過時は下降器の上部に設置したフリクションノットに一時的に体重を預けます。その次に結び目の下に下降器をセットしますが、この下降器に体重を移さないと上部のフリクションノットが解除できません。この方法としては足をのせるフリクションノットを一時的に作って上部の荷重を抜いたり、そもそものフリクションノットのスリングを長めの物を使用して、結び目下に設置した下降器に荷重が移りやすい状態にするなど、慣れが必要だと思われます。やはり、訓♡練♡は♡重♡要♡

 

本日は盛りだくさんです。次はアブミを持っていない状態で人工登攀をしなくてはいけない状態を想定して、アルパインヌンチャクを使用した人工登攀です。

60㎝スリングを使用したアルパインヌンチャクを駆使してアブミ代わりに登って行きます。発見!工夫すると意外と登れる◎

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次は、次はセルフレスキューの引き上げです。リードクライミングでセカンドが受傷したと仮定し、上方の安定したテラスに引き上げます。

使用したシステムは3分の1です。ダブルロープを使用した状態でビレイヤーがATCガイドを使用していた時にセカンドが落ちたと仮定しています。

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本などに引き上げのやり方はいろいろと載っていますが、そもそもそのシステムを構築するまでにも、ビレイヤーが自己脱出を行わなくてはなりません。実際に行なってみてスムーズに引き上げ体勢に移れる方法は、①支点のATCガイドでダブルロープ1本を使用して仮固定をする。②固定していない方のロープで3分の1引き上げシステムを構築する。③引き上げ作業を行う。というものでした。

救助人員数や支点の足場の状態などでその時々での対応は変わると思いますが、訓練をして基本的な手順を分かっていないと、いざトラブルが起きたときに落ち着いて対処することはできないと思います。やはり訓練は〇〇♡

ちなみに3分の1システムで、ある程度の体重差の相手でも引き上げ出来たので、シンプルなシステムであるこの方法が現実的なシステムだと思われます。

 

介助懸垂の練習も行いました。

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次はロープ切断テスト。

古いロープを使用して岩角に当たったロープがどれだけ簡単に切れるのか確認します。

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岩角90°位の石で荷重をかけたロープをこすってみます。短時間でロープは切れました。映画のように内芯が一本ずつ切れて行くようなものではなく、スパッ切断されました。内芯の数本が切れるとロープは一気に弱くなるので、その先は岩角で簡単に切れて行きます。

丸角の石でもこすってみます。角が丸いとなかなか切れませんが、最終的には切れました。

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以上より、トラバース中に落ちて降られるような場合はロープが鋭利な岩角にこすれると簡単に切れてしまう事が想定されます。また、丸い岩角でも、トラブルなどで長時間ロープの同じ場所がこすれ続けると切断されることが考えられます。岩角にできるだけ設置しないようなランニングの取り方や、支点設置が重要であると思い知らされました。

ちなみに切断後のロープの状態。右上は内芯を切断部分から引き出してみました。

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そして最後は、リードクライミング中のいろいろなパターンを想定しての対処訓練。

「上方テラスが安定している状態でセカンドが受傷」→トップによる引き上げ

「トップが受傷。意識あり。ロープは半分以上出ているのでロワーダウンは出来ない」→セカンドがルートを登り、トップを下ろし、セカンドは懸垂

など。いろいろなパターンを想定して対応方法をシミュレーションしました。

その中でも対応が分かりづらい、「ロープ半分以上出た位置でトップが受傷。自力行動不可」のケースと、「セカンドが受傷。安否不明、受傷地点はトップの支点からロープ半分以上の位置」のケースを実勢してみました。下の写真は後者のケースで、トップがビレイの自己脱出をした上で、懸垂下降でセカンドの様子を見に行くという一連の動作を行っているもの。

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以上で2日目の訓練も終了しました。

 

登攀の技術は頭で理解していても、実際にフィールドで行うと、想定していなかったいろいろな問題が出てきます。

バックアップなどで安全を確保した上で、実践を想定した訓練をすることは非常に有効な訓練方法であると感じました。

2日間、有意義な訓練ができたと思います。ありがとうございました!